殺人
1 法定刑
死刑又は無期若しくは五年以上の懲役(刑法199条)
2 どのような罪か?
説明するまでもなく人を殺してしまった場合に問われる罪です。
もっとも、例えば、ナイフを胸に刺したような場合であっても、殺意がなければ殺人罪は適用されません。誤って刺してしまったような場合は、殺意が否定され、過失致死罪や傷害致死罪の適用が考えられます。
3 弁護方針
被告人が、事実関係を認めている場合は、主に情状面に絞った弁護活動となります。
他方、事実関係を否認する場合は、殺意や因果関係の有無、正当防衛を争うことが考えられます。
殺意があったか否かは、本人の心の中のことなので、厳密には本人にしかわかりません。もっとも、客観的状況(傷の部位、程度、凶器の種類、用法、動機の有無、犯行後の言動等)を総合的に検討することで、殺意の有無を認定できることがあります。
殺意が否定され、傷害致死罪となれば法定刑が3年以上の有期懲役であるのに対し、殺人罪であれば死刑又は無期若しくは5年以上の懲役と一気に重くなるため、この認定は慎重になされる必要があります。
傷害
1 法定刑
十五年以下の懲役又は五十万円以下の罰金(刑法204条)
2 どのような罪か?
傷害罪は、他人の身体に対する傷害行為を処罰する犯罪です。例えば、人を殴って怪我をさせたというのが傷害罪の典型例です。もっとも、法律上は、怪我をさせる行為だけでなく、嫌がらせの電話によって相手方をノイローゼにさせるとか、故意に病気を移すような行為も傷害罪に該当することになります。
3 弁護方針
被害者との示談交渉が重要です。
起訴される前の段階で示談が成立すれば、不起訴処分となることもあります。起訴後であっても、示談が成立していれば、量刑に大きく影響してきます。示談金の相場は、あってないようなものですが、交通事故の場合の慰謝料+αになることが多いようです。交通事故の場合は、事例が多く、おおよその相場が決まっています。もっとも、交通事故は過失による傷害ですが、傷害罪の場合は、故意によるものですので、多少の増額はやむを得ません。
また、事実関係を否認する場合は、収集した客観的証拠に基づき、本人の供述が真実であることを捜査機関や裁判所に対して主張・立証していくことになります。