1.被疑者の権利を守る
被疑者が逮捕・勾留されると、捜査機関から取調べを受けることになります。その際、被疑者には、言いたくないことは言わなくてもいい黙秘権という権利が保障されています。
黙秘権が保障されていることについては、取調べを受ける前に取調官から、教えてもらえるのですが、一般市民が、制服を着た警察官から、狭い部屋で取調べを受けると、勇気を持って黙秘権を行使できることは難しいです。また、黙秘権を行使することで、かえって不利益が生じるのではないかと誤解してしまうこともあります。
弁護士を付けることによって、このような被疑者の権利についてアドバイスを受け、必要な際には、黙秘権を行使しやすくなるでしょう。
また、被疑者が取調べを受けると、たいていの場合、供述調書が作成され、署名押印を求められることになります。そして、作成された供述調書は、裁判上、重要な証拠となります。
もっとも、被疑者は、調書への署名押印を拒否する権利があり、調書の記載内容を訂正するよう求める権利もあります。
しかし、実際には、内容について十分に確認しないままに署名押印してしまったり、警察からの圧力に負けて署名してしまうケースが後を絶ちません。
弁護士を付けることによって、被疑者にとって不利な証拠を作られないよう防御することができるようになります。
2.家族や職場との連絡
被疑者が逮捕されている間、ご家族や職場の方は、被疑者と面会をすることはできません。弁護士しか面会することが許されていません。
勾留されている間は、平日の受付時間内に限り、警察の立ち会いの下、約20分程度面会をすることができます。もっとも、接見禁止という措置がとられている場合は、面会はおろか、手紙のやりとりもできません。しかし、弁護士は、接見禁止が付いている場合でも、休日や夜間であっても、1日何回でも、時間無制限で、警察官の立ち会いなしに、面会(接見といいます)をすることができます。
このように、逮捕勾留された被疑者は、弁護人と接見することにより、ご家族や職場との連絡を取ることができるようになるため、精神的なサポートを得ることができます。この点は、弁護士に依頼する極めて大きなメリットです。
3.被害者との示談交渉
被害者のいる犯罪においては、被害者と示談をすることが、極めて重要です。
起訴される前に示談が成立すれば、起訴を阻止して早期に釈放されることもあります。起訴後であっても、被害者との示談成立は、裁判の中で、大きく考慮されますので、不成立の場合と比較して、量刑が軽くなることが多いです。
示談の方法としては、解決金、示談金名目で、被害弁償をして示談するケースや、お金に換算できる損害が発生していないような場合には、被害者から嘆願書を取得するケースなどがあります。
もっとも、明らかに被害者が示談を望まないケースでは、交渉をすることができません。
4.捜査機関との交渉
警察や検察官と折衝し、捜査状況・方針等の情報を入手して被疑者やご家族に伝えたり、弁護士が把握している情報を元に、捜査機関に意見をして、身柄の早期解放を目指したり、不当な逮捕や身柄拘束を阻止します。
また、不当な勾留決定等に対しては、準抗告という手続きによって不服を申し立てることもあります。
5.身柄の早期解放
(1) 逮捕時の身柄解放
被疑者が逮捕されると、48時間以内に被害者の身柄や、事件記録が検察庁へ送致されます(いわゆる書類送検)。事件の送致を受けた検察官は、被疑者を引き続き身柄拘束すべきと判断した場合、24時間以内に、裁判所に対し勾留請求をします。
この段階では、勾留の必要性がないことを検察官に訴えて勾留請求を阻止するよう働きかけることになります。
(2) 勾留時の身柄解放
検察官から勾留請求がされると、裁判官が、被疑者の弁解を聞いた上で、勾留するか否かを決定します。勾留を許可する決定がなされると、原則として10日間身柄が拘束され取調べを受けることになります。
10日間で捜査が終わらない場合は、検察官から勾留延長請求がされ、裁判所が延長を許可する裁判をした場合は、さらに10日間勾留されることになります。
逮捕されてから2回目の勾留満期を迎えるまで、最大23日間です。この期間を被疑者段階と言います。
この段階では、勾留延長の阻止、勾留期間の短縮を目指して勾留の決定に対する準抗告を行ったり、検察官に意見して捜査を早期に完結させるよう働きかけます。
(3) 起訴後の身柄解放
起訴されてからも、勾留は続きますが、起訴後は、保釈請求をする権利がありますので、請求が認められると身柄が解放されます。保釈をするためには、①身元保証人と②保釈保証金が必要となります。保釈保証金は、被告人の逃亡を防止するための、いわば担保のようなものですから、逃亡せずに判決を迎えれば返金されます。保釈金の金額は、被告人の資産状況等によっても異なりますが、150万円~500万円程度のことが多いです。
(4) 早期解放によるメリット
身体拘束が長引くと、学校や職場から逮捕勾留されている事実を知られることになり、職場復帰に支障を来すことがあります。
また、身体拘束中は、ご家族の方と面会する機会も限られますので、精神的な負担が重いです。何よりも、警察や拘置所の監視下に置かれた状態で、鉄格子の中で生活していくことは、相当な精神的ダメージがあり、体調を崩してしまう人もいます。また、身柄が拘束された状態で、示談や裁判の準備をしなければならないため、何かと不自由なことが多いです。
これらの状況から脱するために、身柄解放を目指すことには大きなメリットがあります。弁護士は、勾留・起訴の各段階において、早期解放の実現のため、捜査機関や裁判所、被害者らと様々な折衝、請求をしていきます。
6.冤罪を防ぐ
冤罪(えんざい)とは、無実である者が、犯罪者として扱われてしまうことをいいます。
犯人ではないのに、捜査機関から容疑をかけられ、逮捕勾留されることは、決して珍しいことではありません。また、長時間に及ぶ取調べ等の違法な捜査により、追い詰められた結果、虚偽の自白をしてしまうケースも散見されます。
ところが、このように違法な捜査により作成された供述調書であっても、後に裁判で覆すのは極めて困難です。
そのため、取調べの段階で、弁護士から適切なアドバイスを受け、虚偽の供述調書を作成されないよう、また、違法な捜査がなされないよう、防御をする必要があります。
早い段階で、弁護士に依頼することが、冤罪の防止につながります。
7.不起訴処分を目指す
不起訴処分を目指すことは刑事事件を解決する上で極めて重要です。そのためには起訴前の段階から弁護士を選任することが必須です。
起訴するかどうかを決めるのは検察官です。そして、起訴された場合の99.9%が有罪判決となります。つまり、検察官は、有罪になる事件しか起訴しないということです。
起訴されるかどうかは、被疑者にとって極めて重要です。
検察官が最終的に処分した者の中で、起訴されなかったケースは全体の55%程度です(平成20年)。
罪を犯してしまっているような場合でも、被害者への示談状況、本人の反省、犯罪の内容、環境の整備などによっては起訴されないこともあるのです。
逮捕直後に弁護士をつける最大のメリットの1つは、自白事件であっても不起訴を勝ち取る弁護活動をすることにあります。このために弁護士は、被害者に謝罪や被害弁償、示談を行い、本人の反省や監督状況などを検察官に伝えます。