訴訟による解決
訴訟前の交渉で話し合いによる解決ができなかった場合、依頼者の方と話し合いの上、提訴するかどうかを決めます。
この場合、担当弁護士は、これまでの調査・交渉経緯などから得られた情報をもとに、訴訟に踏み切った場合の見通しを説明します。その説明をよくお聞きいただき訴訟を依頼するかどうかをお決めいただきますようお願いいたします。なお、これまでに収集された情報の内容によっては、訴訟でのご依頼をお断りすることがあります。担当弁護士から十分なご説明をいたしますのでよくお聞きください。
Q 訴訟にはどれくらいの費用がかかりますか。
A 当事務所に「訴訟」をご依頼する場合、1着手金、2実費、3報酬が必要となります。
1 着手金
勝訴敗訴に関わらず、当事務所にお支払いいただく金額です。基準は以下の基準になります。一旦お支払いいただいた着手金につきましては、理由の如何を問わず返却できませんのでご注意ください。
経済的利益の額 | 着手金 |
---|---|
300万円以下の場合 | 8% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 5% + 9万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 3% + 69万円 |
3億円を超える場合 | 2% +369万円 |
2 実費
訴訟を進める際に不可避的に生じる費用です。裁判所へ支払う訴え提起手数料(貼用印紙額)、鑑定料などがこれにあたります。事件内容によって様々ですので、詳しくは担当弁護士にお尋ねください。
3 報酬金
訴訟の結果、実際に依頼者の方に金額等が支払われた場合に、報酬として当事務所にお支払いいただく金額です。基準は以下のとおりになります。なお、敗訴し、依頼者の方へ和解金が支払われなかった場合には、当事務所へ報酬金をお支払いいただく必要はありません。
経済的利益の額 | 報酬金 |
---|---|
300万円以下の場合 | 16% |
300万円を超え3,000万円以下の場合 | 10% + 18万円 |
3,000万円を超え3億円以下の場合 | 6% + 138万円 |
3億円を超える場合 | 4% + 738万円 |
Q 誰が提訴できるのですか
A 医療事故の被害者である患者さん本人です。被害者である患者さんがお亡くなりになっている場合にはその相続人が提訴できます。
Q 誰に対して提訴するのですか
A 医療事故の加害者である医療機関の開設者が被告となるのが原則です。場合によっては、医療従事者もあわせて被告として提訴することもあります。
Q 医療過誤を起こした医療機関の開設者や医師にはどのような責任があるのですか?
A 大きく分けて①民事責任、②刑事責任、③行政上の責任の3つがあります。
(1) 民事責任
医療過誤を起こしてしまった医療機関などは、医療過誤の被害者に対し、損害賠償金を支払う義務を負わなければならないという責任です。
この責任を追求する場合、患者さんに発生した損害を金銭的に評価して、医療機関等に対し、一定の金銭の支払いを命じるよう裁判所に対して申し立てをすることになります。
ただし、医療事故が発生すれば、必ず医療機関等が損害賠償責任を負うというわけではありません。医療機関等が損害賠償責任を負うためには、医療機関に「過失」があり、患者さんに「損害」が発生し、過失と損害との間に「因果関係」が存在する必要性があります。
患者さんが、裁判所に対して、医療機関等に一定の金銭の支払いを命じるよう、裁判所に対して申立てを行うにあたっては、患者さんが「過失」・「損害」・「因果関係」を立証していくことになります。
(2) 刑事責任
刑事責任とは、医療従事者が刑法その他の刑罰法規に違反した場合に、その医療従事者に対し、懲役、禁固、罰金等の刑事罰が課されるというものです。
医療過誤に関係する刑事責任としては、業務上過失致死傷罪、無資格診療などがあります。被害に遭われた患者さんは、直接医療従事者に対しこの責任の追求をすることはできませんが、「告訴」、「検察審査会に対する審査申立て」といった手段をとれる場合があります。
(3) 行政責任
行政責任とは、厚生労働大臣などが、医療従事者の免許に関して、犯罪行為や医療に関する不正行為を行った者に対して一定の処分を行うというものです。
医師について具体的には、「医師免許の取り消し」、「3年以内の医業の停止」、「戒告」などがあります。
但し、被害に遭われた患者さんが、この行政責任の追求を直接申し立てることは認められていません。
Q 損害賠償責任を追求するための「過失」とはいかなる概念なのですか
A 「過失」というのは、通常の一般人であれば有すべき注意義務に違反したことというとされています。
この注意義務というのは、結果の発生を予想し、その予見できる結果の発生を回避しなければならないという予見義務と結果回避義務から成り立っています。
そして、この注意義務は、診療をした時点の医療水準に合致したものである必要があります。 詳しくは、担当弁護士にお尋ねください。
Q 過失と損害の「因果関係」とはどのような概念なのですか?
A 因果関係は難しい概念ですが、ここでいう「因果関係」とは、自然科学的な一切の反論を許さないものである必要はなく、「普通の人であれば、その不適切な医療行為から当然にその結果が起きると考える程度で足りる」とされています。
Q 「損害」にはどのようなものが計上されるのでしょうか?
A 治療費、通院交通費、休業補償、介護費用、一定の弁護士費用、被害に遭わなければ労働して得られたであろう賃金額(逸失利益)、慰謝料などがあります。
Q 民事責任を追求するにあたって期間制限はないのですか
A あります。長期間放置しておくと、民事責任を追求する権利が消滅してしまいます。これを消滅時効といいます。
消滅時効の期間は、法律構成によって変わりますが、3年あるいは10年です。いつからその期間をカウントするか、ご自分のケースが時効消滅にかかっているかについては担当の弁護士にお尋ねください。
Q 民事裁判にはどれくらいの期間を要しますか?
A ケースバイケースですが、訴訟を起こしてから第1審の審理が終わるまでに平均して2年という統計があります。