調査のご依頼について
ご相談の結果、医療事故の可能性があると判断され、ご相談の方が調査で依頼したいご意向であれば、「調査」でご依頼をお受けするということになります。
この「調査」というのは、非常に大切なプロセスです。医療事故の解決のプロセスの中で最も重要なものといっても過言ではありません。十分な調査をすることでその後の見通しや方向性が見えてくるからです。逆にこの「調査」をないがしろにすると、後々の示談交渉や訴訟等において不利になることもあります。したがって、当事務所では、この「調査」に最も時間をかけ、丁寧かつ慎重に行ないます。依頼者の方には十分な調査時間をいただくようお願いするところです。
Q 「調査」にはどれくらいの費用がかかりますか。
A 当事務所では、調査手数料として20万円から30万円程度、実費として10万円をお預かりしております。(ただし、上記金額は一般的な事件の場合です。事件の内容によって増加する場合があります。詳しくはご相談の際に担当弁護士にお尋ねください。) なお、調査手数料としてお支払いいただいた費用は、調査の結果、医療機関に損害賠償等を請求することができないと判断され、それ以降の段階(例えば示談交渉や訴訟)へ進むことができない場合でもご返却はできません。すなわち調査手数料や実費としてお支払いいただいた費用を回収できないというリスクがあるということです。この点について、よくご理解された上でご依頼いただきますようお願いいたします。ご不明な点は担当弁護士に納得がいくまでお聞きください。
Q 「調査」とは具体的には何をするのですか
A 事件の内容によって様々ですが、比較的よく行なわれる調査内容につき以下ご説明いたします。
① 証拠保全
弁護士が調査を行なうにあたって、診療録(カルテ等)を入手する必要があります。証拠保全はカルテ等の改ざんのおそれのある場合に、裁判所に対し、カルテの内容を特定してもらうように申し立てを行なうものです。その方法は裁判所によって様々ですが、保全先の医療機関の協力を得て、保全先医療機関でコピーをとることが多いようです。他には、保全先医療機関において写真を撮ったり、一時カルテを保管することもあるようです。
② 診療記録の分析
証拠保全等の手続きによって、診療記録等が弁護士の手元に届いたら、次に行なうのが、診療記録等の分析です。診療記録には医学上の専門用語や医学英語、略語等が記載されており、そのままでは判読できないことも多いので、分からない用語は専門の辞典などで調べたり、翻訳依頼をすることによって判読していきます。
このように診療記録の判読が進み、そこに何が書かれているかが分かってきたら、次に行なうのが、診療経過一覧表の作成です。これは時系列に沿って患者の主訴、検査(結果)、処置、投薬内容等を整理していくという作業です。この作業をすることで、診療上の問題点や、調査しなければならない医学上の情報がおぼろげながら明らかになっていきます。
③ 医学文献の収集
診療経過一覧表を作成していく中で、診療上の問題点や調査しなければならない医学上の情報が明らかになってきましたら、次に行なうのは、医学情報が記載された医学文献の収集です。医学文献には、「成書(医学に関する標準的な教科書のことです。)」、「医学事典」、「医学論文」、「各種ガイドライン」などがありますが、それらを医学部の付属図書館やインターネット検索等で収集していきます。
④ 説明会
証拠保全等によってカルテ等を収集しても、事実が全て明らかになるわけではありません。例えば、カルテ等には患者さんの主訴・検査結果・投薬内容などは書いてありますが、手術の経過や手技の具体的内容、担当医がなぜその治療方法を選択したのかの考え等は書かれていないことが多いです。このような場合、担当医等に直接説明を求めます。説明会は、カルテ等から得られた「点」の情報を繋いでいく作業(情報収集作業)と考えるとイメージしやすいかもしれません。
⑤ 協力医への相談
このように弁護士は、詳細に事実経過を調査し、規範となるべき医学的知見を広く収集していきますが、医学については素人であり専門家ではない以上限界があります。また医療行為は生の患者(人間)を相手にするものですし、患者(人間)にはそれぞれ個性がありますので、必ずしも全てのケースについて医学書や医学論文に掲載されているわけではありません。それゆえ、医療行為は、医師を含む医療従事者の経験に頼るところも少なくありません。
患者側弁護士から依頼を受けて、医学上の知識・経験をふまえた上で、なんらかの形で指導援助をする医師のことを「協力医」といいますが、上記の点を補うために、「協力医」に、医学上の専門的な知見に基づく経験則等につき教示を仰ぐこともあります。