セクハラ(セクシュアルハラスメント)とは
セクハラは、大きく分けて2つの類型があり、下記の2つを含むものとされています。
① 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動に対する労働者の対応により、その労働者が解雇、降格、減給等の不利益を受けるもの(対価型)
② 職場において行われる労働者の意に反する性的な言動により労働者の就業環境が不快なものとなったため、能力の発揮に重大な悪影響が生じる等、その労働者が就業する上で見過ごすことのできない程度の支障が生じるもの(環境型)
パワハラ(パワーハラスメント)とは
パワハラについては、法令上の定義はありませんが、一般的には、職権など(パワー)を背景にして、本来の業務の範疇を超えて、継続的に人格と尊厳を侵害する言動を行い、労働者の働く環境を悪化させたり、雇用不安を与えたりすること、などと定義されています。
セクハラ・パワハラが違法とされる場合
セクハラやパワハラが違法とされるのは、一言でいうと、問題となる言動が社会通念上許容される限度を超えている場合です(なお、セクハラやパワハラに当たれば違法と考えるのか、セクハラ・パワハラに当たるものの中に違法なものがあると考えるのか、という理論的な問題もありますが、ここでは、説明の便宜上、後者の考え方を前提として話をすすめます)。
セクハラ・パワハラそれぞれについて説明すると、以下のようになります。
セクハラ
セクハラに関する裁判例では、「職場において、男性の上司が部下の女性に対し、その地位を利用して、女性の意に反する性的言動に出た場合、これがすべて違法と評価されるものではな(い)」とした上で、「その行為の態様、行為者である男性の職務上の地位、年齢、婚姻歴の有無、両者のそれまでの関係、当該言動の行われた場所、その言動の反復・継続性、被害女性の対応等を総合的にみて、それらが社会的見地から不相当とされる程度のものである場合には、性的自由ないし性的自己決定権等の人格権を侵害するものとして、違法となる」という判断基準を示しています(名古屋高裁金沢支部判決平成8年10月30日、最高裁平成11年7月16日上告棄却により確定)。
パワハラ
たとえば、職場で部下を叱ることは、社会通念上、業務を遂行する上で一定程度許容されると考えられています。それが業務の遂行に必要なものであれば、直ちに違法とはいえません。
しかし、業務上の必要性、行為者の意図・目的、その行為の態様や反復継続性、被害者の受けた不利益の程度等を総合的に考慮し、その言動が社会通念上相当とされる程度を超えている場合には、労働者の人格権を侵害するものとして違法性が認められます。
以上のように、セクハラやパワハラについては、諸事情を総合的に考慮してその違法性が判断されますので、個別事案の詳細な経緯の聴取、裁判例等の調査・検討が不可欠です。ご自分の受けたセクハラ・パワハラが違法となりうるかどうかについては、弁護士にご相談ください。
セクハラ・パワハラへの対応策
セクハラ・パワハラへの対応策としては、以下のものが考えられます。
1 セクハラ・パワハラの証拠の確保
セクハラ・パワハラは、証拠が残りにくいため、証拠を確保することが非常に重要です。ICレコーダーによる録音、ビデオカメラによる録画、相手方とのやり取りが記載されたメールの保存、詳細なメモや日記をつけるなど、できるだけ多くの証拠を収集することが大切です。
2 相手方に通知書を送付する
弁護士から内容証明郵便によって通知書を送付し、相手方にセクハラ・パワハラをやめるよう申し入れます。これによって相手方と示談が成立する場合もあります。
3 会社側に適切な措置を講ずるよう申し入れる
セクハラについては、雇用機会均等法11条1項によって、事業主に対し、セクハラを予防するための雇用管理上必要な措置を講ずることが義務づけられています。そこで、会社に対し、セクハラの適切な調査・処分、予防措置などを講ずるよう申入れを行います。
パワハラについても、事案により、会社に対し、加害者のパワハラをやめさせる適切な措置を取るよう申入れをする場合があります。
4 民事訴訟などの申立て
上記2及び3の方法で解決に至らない場合や、すでに退職している場合には、民事訴訟手続などの利用を考えます(なお、訴訟等の前に、加害者等に対して損害賠償を求める通知書を送付する場合もあります。これによって相手方と示談が成立する場合もあります)。
5 その他
セクハラとして、強制わいせつ、強姦、傷害などの犯罪行為が行われる場合がありますし、パワハラとして、傷害などの犯罪行為が行われる場合もあります。これらの場合には、刑事告訴を検討する余地があります。
また、セクハラやパワハラを原因とする精神疾患を発症した場合には、労災申請を検討する余地もあります。