(1)弁護士から銀行へ受任通知を送付する。
弁護士との相談を経て、委任契約を締結したら、まず、銀行に対し、代理人として弁護士が受任したことを銀行に通知します。内容証明郵便により、弁護士が窓口になること、損金の引き落としを停止すること等を求めます。
これにより、デリバティブ取引についての折衝は、原則として弁護士が窓口となり、依頼者が直接交渉することがなくなります。
(2)損金の引き落としが止まる
(1)の通知により、損金の引き落としが止まります。
支払いを止めることにより、融資が引き上げられたり、預金が凍結されるのではないかという心配をされることがありますが、実際にそのような措置をとることは、まずありません。メインバンクを相手にする場合、特に慎重になるところですが、融資引き上げに至るケースは基本的にはないと考えてよいと思います。銀行サイドでは、融資の支払停止とデリバティブの支払停止は別の扱いがなされているようです。
(3)全銀協等のあっせん手続きを申し立てる(金融ADR)
①金融ADRとは何か?
ADRとは、裁判外の紛争解決手続のことです。訴訟のように判決が下されるのではなく、当事者の話し合いによる解決を目指します。あっせん委員を交えた当事者間の話し合いですから、迅速かつ柔軟な紛争解決が可能ですが、話し合いが合意に達しないと紛争解決には至りません。
金融ADRは、金融機関との取引を巡って紛争が生じた場合に、第三者機関により紛争を解決しようとする制度です。平成22年10月頃に始まったばかりの制度ですので、歴史は浅いですが、デリバティブ問題の解決をする際には、もっとも広く利用されている制度です。
②全銀協とFINMACの違い
デリバティブ取引に関して金融ADRを取り扱っている機関は、一般社団法人全国銀行協会(全銀協)と、特定非営利活動法人証券・金融商品あっせん相談センター(FINMAC)があります。
全銀協は、銀行が会員となり、銀行業界のため公的な活動を行っている組織です。
FINMACは、日本証券業協会から派生してできた、あっせんのための組織です。
いずれの機関を利用すべきかについては、悩ましいところですが、銀行が相手方となる場合は、全銀協が、証券会社等が相手方となる場合は、FINMACが利用されるケースが多いようです。
全銀協の場合は、デリバティブ取引を解約する際にかかる解約精算金を支払う形での解決となった場合、その支払につき、相手方銀行から融資を受けるというスキームにつき、取り決めをすることもできます。
どちらを利用した方が有利かは、一概には言えないため、個別の事案ごとにアドバイスさせて頂きます。
(4)あっせん手続きの流れ
(5)訴訟提起
ADRの結果に納得がいかなかった場合には、訴訟による解決を目指します。
民事裁判は、当事者間の紛争を裁判所で強制的かつ拘束力をもって解決する制度です。判決の取得を目指しますが、裁判途中に和解で解決することもあります。
当事者の話し合い解決する金融ADRとは異なり、裁判官が最終的な判断を判決という形で示します。厳格な手続きを経て判決に至りますので、ADRよりも時間がかかります。おおよそ1~2年程度で解決に至ることが多いです。
デリバティブ取引に関し、理解のある裁判官とそうでない裁判官がいますので、どの裁判官にあたるかも、結論に影響します。 裁判の基本的な流れは以下のとおりです。