(1) 財産分与の基本的な考え方
Q 私は専業主婦で、稼ぎはありませんでしたが、財産分与を求めることはできますか。
A 財産分与とは、夫婦が協力して作り上げてきた財産を離婚時に清算することです。専業主婦の方は「内助の功」というべき貢献をしており、その結果夫婦の財産が形成されているわけですから、預金や不動産の名義に関わらず、婚姻後に得られた財産は夫婦の共有財産とされることが通常で、分与を求めることができます。
もっとも、一方配偶者が親から相続した財産などは、夫婦が協力して得たものではないため、夫婦の共有財産ではなく、分与の対象となりません。また、各自の持ち物と考えられる装身具なども共有財産ではなく、分与の対象とはされません。
(2) 退職金の扱い
Q 配偶者は、現在さしたる財産はありませんが、これまで20年間会社勤めをしていますから、将来給付される退職金が貯まっているはずです。これを分けてもらうことはできないでしょうか。
A 退職金は、賃金の後払い的な性質がありますので、財産分与の対象となってもおかしくありません。しかし、実際に退職金が支給されるかどうかは、将来のことですから、分かりません。例えば、会社が倒産したり、配偶者が懲戒解雇されたりすれば、退職金は支給されません。
このような観点から、退職金は、①支給された後であれば、分与の対象となることに争いはありませんが、②未だ支給されていない場合には、ほぼ確実に支給されるだろうと見込まれる場合(例えば、定年退職まで残り数年程度となっている場合)を除いては、分与の対象とはなりません。
(3) 住宅ローンつきの不動産
Q 私たち夫婦の財産は、夫名義の不動産くらいですが、住宅ローンがまだ残っています。このような場合、不動産はいくらと評価されますか?
A 不動産の価値よりもローン残額のほうが大きい、いわゆるオーバーローン状態の不動産に関しては、無価値のものとして扱うのが一般的です。不動産の価値のほうがローン残額より大きい場合には、不動産の価値からローン残額を減じた金額を基準とすることになります。